不妊治療には大きく分けて、一般不妊治療と高度生殖医療(ART:生殖補助技術)があります。
一般不妊治療には、夫婦生活のタイミング(タイミング法)、排卵誘発法、人工授精(運動良好精子選別法:AIH)、その他薬物療法(漢方療法など)があります。人工授精は、子宮の中に直接精子を注入する方法です。人工授精を含めたこれらの一般不妊治療で、約半数弱の人が妊娠します。
1. タイミング法
医師の指導のもと、診療によってご自宅ではわかりにくい排卵日を推定し、
性生活における効果的なタイミングをアドバイスします。
 |

左記の図はタイミング法による妊娠は何回ぐらいが効果的かを示したグラフです。
グラフではタイミング法5回目までで92.7%が妊娠しており、6〜8周期以上でのタイミング法による妊娠率は非常に低くなるという結果が出ています。
そのため、当クリニックでは3〜5周期のタイミング法を次のステップに進む大体の目安として、より効果的な治療である 人工授精(AIH)へのステップアップをおすすめしています。 |
 |
| ※2001年〜2005年:当クリニックにてタイミング法を受けられて妊娠された方237名を対象としています。 |
 |
 |
 |
| 上記の図は不妊期間毎のタイミング法によって妊娠された方の人数の内訳になります。 |
2. 薬物療法
・排卵誘発法
クロミフェン療法(セロフェン・クロミッド)
セキソビッド療法
FSH療法(フォリルモンP・フォリスチム)
hMG療法(HMG富士・HMGコーワ・HMGフェリング)
hCG療法
・ブロモクリプチン療法(パーロデル・テルロン)
またはカベルゴリン療法(カバサール)
・高プロラクチン血症
・漢方療法
・黄体ホルモン補充療法(デュファストン・ルトラール・プロゲデポー)
3. 人工授精
・運動良好精子選別法
【人工授精(AIH)】
人工授精は、運動性の良好な調整された精子を、排卵日に確実に子宮腔内に注入することがポイントです。精子を子宮内に注入することによりIUIとも呼びます。運動が良好な精子だけを選別するには、アイソレートによる攪拌密度匂配法と呼ばれる方法を用い、さらに、培養液できれいに洗浄して、完全にアイソレート液を除去し、培養液中に良好運動精子を浮かべるという精子調整を行います。
 |
<精子の調整>
1.精子分離剤に培養液と混和した精液を
重層し遠沈
2.死んだ精子・弱い精子は、精子分離剤を
通過できない
3.精子分離剤を完全に取り除く
4.培養液で2回洗浄後、運動良好精子を回収 |
また、人工授精には、膣から直接、骨盤内の卵管の近くに精子を注入する腹腔内人工授精(DIPI)もあります。
人工授精は4〜5回行えば、妊娠する人と、人工授精では妊娠できない人とに、ほぼ分かれてきます。当院の今までのデータを見ますと、人工授精(AIH)で妊娠されたほとんどの方が4回目までで妊娠されています。そのため、人工授精は通常4〜5回行い、妊娠に至らない場合は、体外受精や顕微授精へのステップアップを考えます。
自然周期で行うよりも排卵誘発剤の内服薬や注射を使用してAIHを行う方が妊娠率は高くなります。当院での人工授精の卵巣刺激はできるだけ弱く行っており、成熟卵胞を1〜2個作ることを目標としております。結果、多胎妊娠が少ないのが特徴です。当クリニックの人工授精の1回当たりの妊娠率は約11%です。人工授精をすることで1/4(約26%)の方が妊娠します。
 |
 |
 |
 |
| 人工授精を受ける年齢によって妊娠率も異なります。女性の年齢が上昇するにつれて、人工授精での妊娠率も低下していきます。30代後半の方は、人工授精の回数の目安を4回程度までとし、早目に体外受精など、高度生殖医療に進むことをお勧めしています。 |
 |
 |
 |
内服薬:セロフェン・クロミッド・セキソビット
注射 :hMG製剤(HMG富士・HMGコーワ・HMGフェリングなど)・FSH製剤(フォリルモンP・フォリスチムなど) |
 |
| 内服薬や注射の排卵誘発剤を使用によってホルモン環境を改善し、妊娠率も高くなります。 |
 |
 |
 |
| |
当院のデータでは6回以上の人工授精を行っても妊娠される方はあまりいませんでした。
人工授精(AIH)4〜5回を一つの目安として次のステップへ進むかどうか考えることになります。 |
人工授精と体外受精とは、同じものではありません。 人工授精とは、子宮腔内または腹腔内に精子を直接、人工的に注入する操作です。
これに対して体外受精は、卵子を体外に取り出し、精子を加えて受精卵を培養して、細胞分裂が始まった胚を選んで子宮内に戻す操作です。体外受精は、「高度生殖医療(ART)」と呼ばれる技術です。
【女性側の治療】
排卵が上手くいかない女性には、ホルモン剤などを投与することで、卵巣を刺激し、卵胞を発育させたり、子宮内膜の厚さを測って受精卵が着床しやすい状態かどうかなどを、綿密に検査します。排卵日を細かく予測して、夫婦の営みのタイミングを具体的にお教えします。
精子は、女性の子宮近くの卵管内や子宮頚管内に数日間生きていますので、必ずしも排卵日に夫婦生活をする必要はなく、排卵日の1〜2日前でも十分です。
【男性側の治療】
採取した精液を検査し、精子濃度が1ml当たり2,000個万以上、直進運動している精子が全体の50%以上あれば正常ですが、それ以下の場合は精子の運動を活発にする薬を内服投与します。ただし、精液の状態は毎回異なりますので、精子の状態が悪ければ、時期を変えてもう一度、精液検査を行い2回とも正常域に入っていない場合を異常と判定します。
その場合、必要に応じて人工授精(AIH)を行います。人工授精とは排卵日に状態のいい精子を子宮腔内に直接注入して受精の確率を高める方法です。
卵管性不妊症に体外受精ではなく自然に近い妊娠を希望される方へ
FT(卵管鏡下卵管形成術)
不妊症の原因の約3割が卵管に問題があり、卵管が詰まってしまったり、狭くなることで、卵子や精子が卵管を通ることができないとされています。こうした卵管性不妊症の方を対象にした内視鏡治療法を卵管鏡下卵管形成術(FT)と言います。
FTはカテーテルと呼ばれる細い管を経腟的に子宮や卵管に挿入し、内視鏡で卵管内の状態を確認したり、癒着を剥離して通過性を回復させる体に負担の少ない治療法です。FTは高度な技術が必要で、熟練した技術をもつ医師の施術が必要です。卵管性不妊症に対する治療方法の一つである体外受精に比べ、保険が適応されるため経済的負担も少なく、より自然に近い妊娠を希望される方に適しています。
FT術後、3カ月以内に再閉塞することもありますので、再閉塞予防の処置を行いながら経過を見て行きます。
適応:@卵管通過障害(卵管閉鎖、卵管狭窄)
A子宮外妊娠既往のある方

@細い内視鏡(卵管鏡)を内蔵した細い管(カテーテル)を用意します。

Aカテーテルを腟から子宮へと挿入し、卵管に近づけます。

Bカテーテルの風船(バルーン)を膨らませて、卵管の中へバルーンを進めます。

C卵管内の全域で詰まっているところを広げます。

D卵管内の様子を、卵管鏡を使って観察します。
|
比較 |
| FT(卵管鏡下卵管形成術) |
従来の卵管手術 |
| 通院日数 |
@1回FT当日
A術後3ヶ月は以内再癒着防止の処置 |
@入院
A開腹手術
B複数の閉鎖部位の治療は困難 |
| 手術後の痛み |
静脈麻酔で眠っているためほとんど無い |
全身麻酔が必要 |
| 手術後の入院日数 |
当日帰宅 |
1週間以上の入院 |
| 費用 |
保険適用
約22万円
※高額医療費控除あり
生命保険の医療保険適用もあります |
保険適用
入院費
差額ベッド代経費 |
| 妊娠努力の開始 |
治療後まもなく可能 |
2ヶ月以上の経過が必要 |
※FTで治療が難しい例
卵管留水症(卵管先端部の閉鎖による卵管の拡張)に対しては腹腔鏡手術となります
※体外受精との位置づけ
体外受精と併用することができます。妊娠可能な選択肢が拡がります。
※FTは卵管狭窄の症例に対しても、子宮外妊娠の予防策としても有意義と考えられています。
わが国におけるFT(卵管鏡下卵管形成術)の権威で、FTの開発者である
慶應義塾大学医学部産婦人科末岡浩先生からの指導を受けて
治療を行なっております。
末岡浩先生のプロフィール
慶應義塾大学医学部産婦人科准教授
専門:生殖医学・臨床遺伝学
専門医:日本産科婦人科学会専門医
日本産婦人科内視鏡学会技術認定医日本生殖医学会生殖医療指導医
日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会 臨床遺伝専門医 臨床遺伝指導医
患者さんへ一言
Never give up!
|